人気ブログランキング | 話題のタグを見る

氷解け

氷解け_e0099713_19452679.jpg
『笑みのおく抱える辛苦氷解け』
師と仰ぐ石和鷹氏と立松和平氏を通じて、歌人の福島泰樹氏と知り合って三十年になる。三歳年上の方を友人と呼ぶには僭越だが、酒席が多い交遊なので、敢えて友と呼ばせていただく。彼は、東京下谷・法昌寺住職である。昨年十二月、『わが心の日蓮』(春秋者社刊)を恵呈いただいた。書名にして直ぐ頁を開く気分になれないでいた。私にも、日蓮へのこだわりがあったからだ。しかし彼は、立松和平の葬儀に際し、導師をされた僧侶である。二月八日は立松の一周忌になる。その前に読了しなくてはと、昨夜読んだ。『バリケード・一九六六年二月』は、福島泰樹の処女歌集だが、早稲田大学闘争を詠んだ歌集で、和平さんと泰樹さんとの出会いと友情を築いた一書である。「あれはなにあれ綺羅星 泊まり込む野営・旗竿しか手にもたぬ」以来、多くの歌集を世に問うたが、宗門と自身の心の内を開陳した書は、本書がはじめてである。いつも笑顔が爽やかで優しい泰樹さんだが、厳しさと矜持を持ったお人であられる。読み進むうちに姿勢を正して一気に読んだ。檀徒をはじめ衆生の辛苦と安寧を一身に背負っていられたお人だったのである。文章の間に引用解説される日蓮御書は、法華経の好説になる。私の近所の溜池は、氷も解けて若葉が茂っていた。私のこだわっていた日蓮宗への宗教観を払拭させ、氷解させてくれた一書であった。
人気ブログランキングへ ←参加しています。応援クリックを、よろしく!
by arajin01 | 2011-02-06 19:30


<< うかれ猫 春めく >>